【声明】アベノミクス新成長戦略「残業代ゼロ一般社員」提言に反対します

【声明】アベノミクス新成長戦略「残業代ゼロ一般社員」提言に反対します

2014年5月8日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

  安倍首相を座長とする産業力競争会議は、4月22日、あらたな「労働時間制度の創設」として、①年収1000万円以上または②労使が合意しかつ本人同意が得られた社員 に残業代を払わない、「残業代ゼロ一般社員」の提言を発表しました。この提言は、6月に改訂するアベノミクスの「新経済成長戦略」第2弾として盛り込まれる方向で検討されています。

 これは、第一次安倍内閣時代に法案化されようとしながら強い反発をまねき、お蔵入りになった「ホワイトカラーエグゼンプション」の焼き直しとも言えるものです。しかし、「ホワイトカラーエグゼンプション」は大企業サラリーマンなどに「時間」に縛られない働き方の裁量を与えるような形を取っていましたが、今回の提言は、「ホワイトカラー」だけではなく、企業側の拡大解釈によって「残業代ゼロ」を一般の働き手にも拡大することを可能にするもので、当時の法案よりもさらに乱暴な内容となっています。

 日本では、正社員の長時間労働が依然として続いており、週60時間以上働く人の割合は、全体の14%、30歳代では18%にものぼっています。労働基準法では、1日の労働時間を原則8時間として、残業時や休日・深夜労働に割増賃金を払うこととしていますが、今回の提言が制度化されれば、これらの規制が事実上撤廃され、残業代ゼロの長時間労働が合法化されます。また、組合等の組織比率が低下している中で、後掲グラフ右にあるように圧倒的に多い中小・零細企業では、本人への十分な説明がない中で、同意せざるえない状況を強いられることも懸念されます。過大な業務を押し付けられれば、成果をあげるため、持ち帰り残業などで実質的な長時間労働は温存されるでしょう。

 短時間で効率よく仕事を片付け自由な時間を楽しむ働き方・生き方への試みも始まっていますが、労働者に残業を強いる風潮がこれを妨げているのです。働く人々が「自由な時間を楽しむ」ためにまず必要なのは、長時間労働や残業、そしてその背景にある不安定雇用などを規制する法制度のさらなる充実であり、EU諸国などで行なわれている労働時間の量的上限の導入や勤務間インターバル規制のような仕組み(※1)も必要です。労働基準監督行政の徹底や労働組合のチェックも一層求められます。

 緑の党は、この「残業代ゼロ一般社員」の提言に反対します。すべての働く人々と共同して、非正規雇用を減らし、全ての人々が生きがいをもって働ける社会、そして「より少なく働き、より豊かに生きる社会」(※2)の実現に向けて努力していきます。

 注:※1:例えば、EU諸国などでは「24時間につき最低連続11時間以上の休息期間の付与」が義務付けられている。          ※2:緑の社会ビジョンhttps://greens.gr.jp/policy/vision/ を参照

 

                    <雇用形態別雇用者数>              <企業規模別雇用者数>

                                                    いずれも総務省統計局 「2014年3月度 労働力調査」 単位:万人)
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