緑の社会ビジョン(前文)

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Siwnin utar sasuy-sir
シウニン ウタラ サスイシリ
(緑の社会ビジョン)



アオカ、ウフイワッカ ヘネ イクリパンテク キロロ イトクパ アン イメル ポロ ウテック プリ オルン タプカラ。アエヤムペ トカプチュプ ヘネ シリ イワイ タシ “シクヌ ペ” レス ワ キンナテ ペ オイラ ワ、イチェン パテク エヤム パコアト。
Aoka, uhuy-wakka hene i-kuri-pan-tek kiror i-tokpa an imeru poro utek puri or un tap-kar. A=eyam-pe tokap-cup hene siri iwai tasi “siknu pe ” resu wa kinna-te pe oyra wa, icen patek eyam pakoat.

(私たちは、石油と原子力に象徴されるエネルギー大量消費型の文明に、踊り、踊らされてきました。かけがえのない太陽と地球の贈り物によってこそ“いのち”が育ち、輝くことを忘れ去り、おカネで計れるものだけを尊ぶような勘違いを続けてきました。(注1))


オラ、チカシヌカラ ニタイ、ペッ、シリ、アトゥイ アエオチシチシレ、タ ノチウ キリリセ。“アシクネホッネン ウン シネン” パテック カンナ モシリ アコシリヌヌプ シヘコテ ホトゥイェ カラ、 イカシマ “シネペサンペ イカシマ シネペサンワンペネン” ウコウイナ コイケ ネプキプヘネペウテクペ スクップ プリ、ウピシカン タ ウコシウトゥルウイルケプ ウアッテ。カッタロ アイヌ ウサ、アマケタ アイヌ ウサ、ウタラ アエラムサラク ワ ラムペカマム。
 Ora, Ci-kasi-nukar nitay, pet, siri, atuy a-e-o-cis-cis-re, ta nociw kirirse. “Asikne-hot-ne-n un sine-n” patek kanna mosir a-ko-sir-nunu-p si-hekote-hotuyekar, ikasma  “Sinepesanpe ikasma sinepesan-wanpe-ne-n” u-ko-uyna koyke nepkip-hene-pe-utek-pe sukup puri, u-piskan ta u-ko-si-utur-uirukep u-atte.Kattaro ainu usa, a-maketa ainu usa, utar a=e-ram-sarak wa ram-pekamam.

(その結果、豊かな森・川・大地・海は破壊され、自然は悲鳴をあげています。わずか「1%」の人びとが世界の富を独占し、残りを「99%」の人びとが奪い合うという歪んだ経済成長の仕組みによって、至るところで格差が広がりました。勝ち負けを問わず、人びとは不安と閉塞感のなかにいます。(注2))


オロ タ エク “3.11”。
アオカ、ポロ ペ オスラ オカネ、ヤアイカ パシテ。ネプキプヘネペウテクペ スクップ イレンカ タシ ホラクペ タ シクシル。ネプキプヘネペウテクペ スクップ キヤンネレ モシリキルプ、イレンカ チョロポック タ モシリ キルプ、ウタラ カシ オイキプ、ハル チャラパ、パシクマップ ヘネ エピッタ プリ アエイヤンヌ。エアシカイ モシリキルプクル、ウタラクスイキクル、エアシカイクル オッタ アエヤムペ アエサラマ “ウタラ ヤイエサンニヨ エサラマップ”、イッケウ ウェン ペ シヘコテホトゥイェカラ コロ アン。
 Oro ta ek “3.11”
  Aoka, poro pe osura oka-ne, yaayka pas-te. Nepkip-hene-pe-utek-pe sukup irenka tasi horak-pe ta ci=kus-ru. Nepkip-hene-pe-utek-pe sukup kiyanne-re mosir-kirup, irenka corpok ta mosir kirup, utar kasi o-ikip, haru-carpa, paskumap hene epitta puri a=eiyannu. E-askay mosir-kirup-kur, utar- kusu-iki-kur, e-askay-kur or ta a=eyam-pe a=e-sarama ”utar yay-e-sanniyo e-saramap ”, ikkew wen pe si-hekote- hotuyekar kor an.

(そこに起きた“3.11”。
私たちは多くのものを失って、やっと気づきはじめました。経済成長神話こそが破滅への道であり、経済成長を優先する政治・行政・福祉・医療・教育などすべてのシステムが破たんしていることを。プロの政治家・官僚・専門家に重要な決定を預けてしまう「おまかせ民主主義」が、最悪の事態を招いていることを。(注3))



タネ、アオカ、ネプキプヘネペウテクペ、スクップ パテック キヤンネレ オロ ワ アシン ワ、“シクヌ ペ” キヤンネ レ ワ タ ノチウ コンナ シクヌ ウルオカタメカレ ネプキプヘネペウテクペ カラ。“ウタラ ヤイエサンニヨ エサラマップ” オロ ワ アシン ワ、ウタラ ヤイエサンニヨ、ヤイチャランケ、モシリキルプ ヤイコタムケ。オラ、イクリパンテク キロロ イメルカラウシ イサム ウタラ、タ ノチウ コンナ シクヌ ワ ウルオカタメカレ エアシカイ。ウサイネ ウサイネ アイヌ ウパクノ ウネノ アアイヌコロ ワ ウタラ、ウエカタイェロッケプ ウタラ オッタ ヤイエサンニヨ。
 Tane, aoka, nepkip-hene-pe-utek-pe sukup patek kiyanne-re or wa asin wa, “siknu pe ”kiyanne re wa ta nociw konna siknu uruokata-mekare nepkip-hene-pe-utek-pe kar. ”utar yay-e-sanniyo e-saramap ” or wa asin wa, utar yay-e-sanniyo, yay-caranke, mosir-kirup yay-ko-tamke. Ora, i-kuri-pan-tek kiror imeru-kar-usi isam utar, ta nociw konna siknu wa uruokata-mekare e-askay, u-sayne u-sayne ainu u-pak-no u-ne-no a-aynu-kor wa utar, u-e-katayerotkep utar or ta yay-e-sanniyo.

(いま、私たちは、経済成長優先主義から抜け出し、“いのち”を重んじ自然と共生する循環型の経済を創りだします。「おまかせ民主主義」にサヨナラし、市民が自ら決定し行動する民主主義、討議し政治に参加する民主主義を実践します。そして、原発のない社会、エコロジカルで持続可能な、公正で平等な、多様性のある社会、平和な世界をめざします。(注4))

 

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(注1)
「石油」:多くの言語で「燃える水」と呼ばれてきましたので、今回も「燃える」「水」で訳してみました。
「原子力」:原子力エネルギーの本質は、原子核が分裂して中性子を出す際、失われる質量が莫大なエネルギーを生み出すことにあることから、「物がパッと消えてなくなる力」と訳してみました。そもそもアイヌ語に訳すのにふさわしい言葉なのか、という疑問もないではないですが・・・
「エネルギー」:もともと「稲妻」を意味し、最近は転じて「電気」の意味で使われるようになった「imeru」を当てました。
「文明」:直接当てはまる言葉が辞書にないことから、「風習」「慣習」を意味する「puri」をあてました。


(注2)
「経済」:アイヌ語には存在しない言葉です。そこで、経済とは何かと考えてみると、大まかに言って生産活動と消費活動だといえます。そこで、「働くことと物を使うこと」と訳してみました。日本語の表現と比較して、経済成長至上主義の問題点がより浮き彫りになるようにも思えます。
「格差」:格差を意味するアイヌ語はなく、それ自体がアイヌ文化の特徴を示しているといえます。そこで、「格差」とは「差別」のことであると考え、「差別」に比較的近いアイヌ語である「u-ko-si-utur-uiruke」(「除け者にする」)で訳してみました。
「閉塞感」:「心が休まらないこと」と訳してみました。


(注3)
「神話」:なかなか訳すのに悩むところです。「kamuy-yukar」(神謡)と訳すのはあまりにも冒涜的です。ここでいう「神話」とは、「ドグマ」(→「考え」)といった意味ですので、「考え」を意味する「irenka」と訳してみました。なお「irenka」には「約束」「法律」という意味もあります。
「政治」:「国を動かす」と訳してみました。
「行政」:「行政」をどのように定義するかは、かなり難しい問題ですが、ここでは、「法律の下で、国を動かす」と訳してみました。国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関は、いうまでもなく国会です。そして行政とは、国会が法律で定めた国の方針に基づいて、国会から選任された内閣総理大臣以下の閣僚が、法律を施行して国務を行うことといえます(73条)。読者の批判を仰ぎたいところです。
「おまかせ民主主義」:「民主主義」とは、人々が自分達の主人となって国の進路を決定することですので、「人々が自分たちで方向を決めて進むこと」、と訳しました。一方、「おまかせ民主主義」とは、そのことを他人に任せてしまうことですので、「人々が自分達で方向を決めて進むことをまかせてしまう」と訳しました。


(注4)
「循環型」:循環型経済とは要するに、物を廃棄してしまうのではなく大切に使っていく経済ですので、「子孫のために残す」と訳してみました。「持続可能な」も同じ訳になってしまうのが難点ですが…
「原発」:先ほど述べたとおり、「原子力」は「物がパッと消えてなくなる力」と訳しました。「発電所」は「電気を作る所」。
「エコロジカル」:「この星と共に生きる」と訳してみましたが、いかがでしょうか。
「公正で平等な、多様性のある社会」:「色々な人が同じように尊重される社会」と意訳してみました。
「平和」:アイヌ語辞典には載っていない言葉ですが、それに近い意味の言葉として、「お互いに仲良くする」を意味する「u-e-katayerotke」を当ててみました。)