【論説】「即位礼」のあり方に異議あり

 

【論説】「即位礼」のあり方に異議あり

 2019年10月26日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 平成天皇から新天皇への皇位継承を内外に示す「即位礼」が10月22日から始まり、一連の儀式・行事が11月まで予定されています。
 新天皇の即位を祝う気持ちを持っている方がたくさんおられるのは理解します。しかし現在、安倍政権は「令和の新しい時代に新しい憲法を」などとして改憲を明言し、その安倍首相が率いる自民党が2012年に公表した改憲草案では天皇を「元首」と明記していることは無視できません。さらに、戦前の天皇制の精神的・道徳的支柱となった教育勅語を、「その一部は」という限定つきながらも支持することを公言してはばからない政治家も大臣として入閣しています。このような情勢の中で、こうした一連の行事が果たす政治的な役割やその性格を考えれば、懸念を表明せざるをえません。
 また、即位礼の一連の行事には、「即位礼正殿の儀」など宗教的儀式と不可分な行事もあり、これらは政教分離原則にも抵触する可能性が小さくありません。

  現在の天皇家が平和への意思を強く持っていることは明らかです。とりわけ、平成天皇が沖縄やサイパンなどの南太平洋の島々など、戦地の慰霊の旅を続けて来たことをはじめ、その行動や発言は、天皇の行動が形式的・儀礼的な国事行為のみに限られるという象徴天皇制としての憲法上の制約から考えれば議論があるものの、安倍政権のめざす方向とは対照的なメッセージとなってきました。そしてその行動に多くの人々が共感を抱いています。

  一方、現在の天皇制は、天皇家に嫁ぐ民間女性も含め、その基本的人権の多くを制約する形で成り立っています。そして彼らは一般国民から遠く、敬まわれるべき存在としての役割を期待され、彼らもその期待の重圧の中にいます。また、「皇統に属する男系の男子が皇位を継承」とする皇室典範は男性優位の思想を示しています。こうした現在の天皇制のあり方(それ自体は憲法本体に規定されているわけではない)を前提にした「祝賀」を、単純に表明できるものではありません。

  さらに現在、即位を祝賀する「賀詞決議」が各地の自治体議会で議決されています。そもそも個人の気持ちに関わるお祝いの決議を議会で挙げることも適切かどうか疑義があります。にもかかわらず、多くの自治体議会で、天皇制問題以外では活発な言動を発する多くの革新系党派も含めて賛同している現実があります。この背景にある「反対できない雰囲気」や同調圧力、あるいは翼賛的な賛同への無自覚な同調も、かつての歴史を考える時、深刻な懸念を表明せざるを得ません。

  私たちは、このような状況と問題意識を踏まえ、安倍政権による天皇の政治利用に結びつきかねない一連の「即位礼」のあり方に異議を表明します。また、祝賀一色の各地の議会決議や報道が続く中でも、こうした論説を公表できる表現の自由と、その自由を保障する憲法の大切さをあらためて確認し、これを守り発展させる決意をあらたにします。

 PDF➡https://greens.gr.jp/uploads/2019/10/ronsetu20191026-2.pdf