【論説】安倍政権の気候・エネルギー政策は次世代への裏切り  ―国連気候サミットと…

 

【論説】安倍政権の気候・エネルギー政策は次世代への裏切り
    ―国連気候行動サミットと若者たちの行動を受けて

 2019年10月26日
緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 去る9月23日、米ニューヨークで国連気候行動サミットが開催されました。各国政府や自治体、企業、市民社会も気候危機の緊急性を共有し、新たなイニシアティブを次々に発表しました。中でも、スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさんが世界中の成人世代や各国の指導者に向けて発した「あなた方は私たちを裏切っています」とのメッセージは、このサミットに先立って全世界規模で展開された気候マーチ(ストライキ)で発せられた訴えとともに大きな反響を呼び、特に多くの若者たちの共感を集めました。

 緑の党グリーンズジャパンは、脱炭素の政治的意思を示す責任のある政党として、まちがいなくこの気候危機の被害を受ける世代であるグレタさんや若者たちの訴えをしっかりと受け止め、パリ協定1.5℃目標実現の誓いを新たにします。各国の指導者、そして「大人たち」の一部でもある私たちは、彼女ら・彼ら、そして未来の世代への責任を果たさなければなりません。

 昨年10月にIPCC「1.5℃の地球温暖化」特別報告が出されてからすでに1年が経っています。また、サミット前から国連のグテーレス事務総長は脱石炭の必要性を強調し、「2020年までに石炭火力発電の新増設をやめる」ことを要請してきました。
 しかし、安倍政権は、脱炭素の流れに逆行し、不十分な温室効果ガス排出削減目標を見直す姿勢もありません。原発を推進しながらCO2や硫黄酸化物・窒素酸化物・PM2.5・水銀などの大気汚染物質を大量に排出する石炭火力発電所の新増設をこの規模で続けているのは、先進国では日本しかありません。世界中で縮小する石炭火力を推進するのは、「残存者利益」を狙って極めて少数の利害関係者のための経済成長につなげようとするものです。
 結局、安倍政権は今回のサミットでも何ら野心的で新しい約束を用意できず、公式会議で表舞台に立つこともできず、安倍総理が繰り返し口にする「日本のリーダーシップ」どころか、世界のトレンドを後追いすることすらできなかったのです。

 日本の姿勢は、グリーンな経済活動を望むビジネスリーダーや安全な気候環境を求める次世代への意図的な裏切りです。石炭と原発への制度的・財政的支援をただちにやめ、持続可能な再エネ100%への転換を進める必要があります。
 そして、この経済状況と不十分な社会保障制度の中で強行された消費増税のような、人々に負担を課す政策を転換し、その代わりにCO2排出量に応じて課税する炭素税を強化すべきです。それによって、省エネルギーや脱化石燃料を進め、貧困層の減税や社会保障の財源にあてる(※1)ことで、貧困対策・格差是正と脱炭素を同時に進めるべきです。日本よりも良好な経済循環と日本よりも大きなCO2排出削減率を同時に達成している国々では、この炭素税が機能しています。

 今回のサミットとその前後に展開されている新しい動きを、日本でも気候エネルギー政策の転換の契機にするため、私たちは、国内の政治プロセスの中でその転換を実現できる実力をつけなければなりません。その第一歩として、党派を超えた人々と連携しながら、グローバルに拡がる「気候非常事態宣言」を日本で緊急発信し、それを可視化するための「ストップ気候危機!自治体議員による気候非常事態・共同宣言」(※2)にも積極的に取り組みます。そして、引き続き脱原発への取り組みを強化しながら、気候政策の導入と持続可能で公平な社会の実限を一体ととらえる取り組みを強力に進めます。

※註 1)炭素配当に関する米国経済学者らの声明
     https://www.clcouncil.org/economists-statement/ などを参照
    2) https://cedgiin.jimdofree.com

 PDF➡https://greens.gr.jp/uploads/2019/10/ronsetu20191026.pdf