はじめに

3つの最重要メッセージ

いのちをつむぐ緑のプロジェクト/ 2013 参院選「公約

緑の党のこだわりの主張

参議院選挙への挑戦にあたって

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■ はじめに -2013参院選「いのちをつむぐ緑のプロジェクト」公表にあたって

私たちがめざす社会のすがた

 今、各地の豊かな森・川・大地・海は破壊され、自然は悲鳴をあげています。人間社会においても、わずか「1%」の人びとが世界の富を独占し、残りを「99%」の人びとが奪い合うという歪んだ経済成長の仕組みによって、いたるところで格差が広がりました。勝ち負けを問わず、人びとは不安と閉塞感のなかにいます。
 そこに「3.11」が起き、私たちは多くのものを失って、やっと気づきはじめました。経済成長神話こそが破滅への道であり、経済成長を優先する政治・行政・福祉・医療・教育などすべてのシステムが破たんしていることを。プロの政治家・官僚・専門家に重要な決定をあずけてしまう「おまかせ民主主義」が、最悪の事態を招いていることを。
 私たちは、経済成長優先主義から抜け出し、“いのち”を重んじ自然と共生する循環型の経済を創りだし、原発のない、エコロジカルで持続可能な、公正・平等で多様性豊かな平和な社会をめざす必要があります。今こそ「おまかせ民主主義」にサヨナラし、市民が自ら決定し行動する民主主義を実践してゆくチャンスです。
 この「緑のプロジェクト」は、その方向性と政策を参院選のマニフェストとして整理したものであり、この参院選で重要な争点となる「原発」「アベノミクス」「96 条・9 条改憲」問題についての主張と根拠、「女性」「若者」「アイヌ民族」など、私たちのこだわりの政策も掲載しています。これは私たちがみなさんと一緒にめざす社会の希望を示しています。

市民自身が政治を創る ーあなたも一緒に歩んでくださいー

 政策を示すことだけで政治を変えることはできません。「原発ゼロ」が世論の7割にも達しているのに自民党は原発を維持し再稼働しようとしています。アベノミクスは一部の企業やお金持ちが得をするだけで、多くの市民は賃金も上がらずインフレに苦しんでいます。96 条と9条の改憲は、国家の暴走の歯止めとなる憲法を、一部の政党や議員が都合良く変えようとするものです。多くの市民が反対し、多くの市民の利益にならない政策がまかり通る政治、それを今こそ変えなければなりません。
 「市民に政治を取り戻す」-この当たり前のことに挑戦するためには、大きな壁が立ちはだかっています。選挙に挑戦するための供託金は、欧米諸国のほとんどの国で高くても10 万円程度ですが、日本では参院選の比例区候補者1人あたり600 万円で、しかも10 人の候補者が必要です。「市民は政治に口出しするな」と言わんばかりの制度を放置しているのも今の政党であり議員です。
 そうした政党や議員に、私たちの大切な主権者としての権利をゆだね、「おまかせ」してきた政治のあり方が、社会や経済の行き詰りにもつながっています。緑の党は、市民に政治を取り戻すために、市民によって立ち上げられた新しい政党です。参加民主主義を原則とし、会員の自由な発言権を保証し、市民に開かれた組織運営を心がけ、議員と市民の対等な関係、男女の対等な権利を保障する政党です。
 「3.11」を経験したこの国が、これまでの社会や経済のあり方を根本的に転換し、誰もが心豊かに安心して生きることのできる社会へと向かっていくために、市民の創った「緑の党」が国会に必要です。どうかいっしょに一歩を踏み出してください!

 「緑の党 グリーンズジャパン」は世界とつながっています

 「緑の党」は、1972 年、オーストラリアのタスマニア環境保護運動の中から初めて産声を上げました。その後1980年代にヨーロッパ各地で次々と結成されました。
 緑の党は、環境保護だけでなく幅広い政策を持ち、平和で持続可能で公正な社会をめざし、ドイツ、フランスや北欧などでは連立政権にも参加しています。EU 議会では、保守・社民・自由主義勢力に次ぐ第四勢力となっています。
 2001 年、緑の党の世界的な連携をめざして、国際組織「グローバル・グリーンズ」が結成されました。そこで採択された「グローバル・グリーンズ憲章」には、「エコロジカルな知恵」「社会的公正」「参加民主主義」「非暴力」「持続可能性」「多様性の尊重」の6つの基本理念(表紙のイラストと説明を参照)が謳われ、具体的な政治的行動指針・政策も掲げられています。
 日本の「緑の党 グリーンズジャパン」もグローバル・グリーンズに参加し、環境問題やグローバル経済と南北問題、安全保障問題などに対応するために国際的に連携しています。また、世界中の緑の仲間たちが日本の緑の党の挑戦を注目し応援してくれています。日本での緑の党の挑戦は、世界にとって、地球の未来にとっても大きな意味を持っています。

参加民主主義とクオータ(割り当て)制を大切にしています

 緑の党は、参加民主主義やクオータ制(議席や役職などへの女性やマイノリティへの割り当て制)を重視しています。
 党内では国会議員と一般会員が対等な立場で運営に参加(11 ページ参照)し、熟議の過程を大切にするとともに、地域での住民投票や原発再稼働問題など重要政策課題での国民投票の制度設計に取り組みます。
 また、4名の共同代表や34 名の全国協議会委員で女性が半数を占め、規約で「女性を半数以上」と明記し実践している唯一の政党です。海外では、クオータ制を導入し、女性の社会進出を飛躍的に高めた事例が数多くあります。また、女性の社会進出は、男性を含む全ての人たちが暮らしやすい、柔軟で多様性を大切にした社会を創ることにつながります(9 ページ参照)。緑の党は、自らの実践でその先導的な役割を果たします。



■ 3つの最重要メッセージ

1.原発ゼロにYES!再稼働はSTOP!

 安全神話と無責任体制が産み出した東京電力福島第一原発事故から2年が経ちます。しかし現在でも数十万人もの人々が避難を余儀なくされ、福島に留まった人々も放射能の影響や将来の生活に大きな不安を抱きながら暮らしています。それにもかかわらず国も電力会社も責任を取らず、補償や賠償、実効性ある支援策は進んでいません。また安倍政権は、民主党政権の「2030 年までに原発ゼロ」のシナリオを見直し、原子力防災計画や規制委員会の安全基準などの欠陥を数多く残したまま、再稼働や新規建設、さらに輸出まで進めようとしています。
 私たちは、危険で不経済な原発を延命させるためにこれ以上税金や人を投入するのではなく、即時廃炉と核廃棄物の最終処分問題への対応、再生可能エネルギーの劇的な拡大に向けた政策的な支援、効率的なエネルギー利用のための制度設計こそ必要だと考えます。
 緑の党は、まず、福島原発事故の被災者に対し、東京電力と政府が自らの責任において賠償し、生活や雇用の再建のために経済的・政策的資源を投入するとともに、原子力から直ちに脱却することを主張します。希望を持って安心して暮せる福島と日本を取り戻すために。

2.フェアな社会をつくる!アベノミクスにNO!

 アベノミクスは株高と円安で景気回復への期待を高めていますが、それはフェアでも持続可能なものでもありません。国債増発に頼る大型公共事業は、一時的な経済効果しかなく、逆に自然環境を破壊します。1000 兆円(国民1 人当たり779 万円)にもなる国の借金をさらに膨らませ、子や孫の世代にツケを押しつけます。日銀がこれまでよりも2 倍のおカネを銀行に注ぎ込む金融緩和政策も、副作用の方がずっと大きくなると危ぶまれます。食料品やエネルギーが円安で値上がりして物価が上がっても、賃金が上がる保証はありません。非正社員をはじめ働く人の賃金を引き上げてこそ、経済は活性化します。成長戦略も、いのちと安心を脅かすTPP 参加、労働者を自由に解雇できる規制緩和が中心です。
 私たちは提案します。非正社員と正社員の格差をなくし、最低賃金を時給1 千円に引き上げます。正社員の働きすぎを制限し、ワークシェアリングを進めます。TPP には参加せず、脱原発・再生可能エネルギー、農業、医療・介護・子育ての分野で 400 万人以上の雇用を10 年間で創出し、地域内でモノ・カネ・仕事が回る経済にチェンジします。

3.憲法を守る!96条「改正」反対!

 安倍政権は、憲法の改正のための国民投票実施の条件となる「衆参議員の3 分の2 以上の発議」(憲法96 条)を「過半数」に緩和することを目指し、参院選の争点に掲げようとしています。
 私たちは、現在の日本国憲法には追加・発展させるべき課題もあると考えています。しかし憲法は日本の民主主義制度の枠組みを定める「最高法規」であり、政府の権力を制限し、市民の権利や自由を守っています。そのため憲法はその原理や基本理念が簡単に変えられることを防ぐために、96 条で改憲手続きを厳しく制限しているのです。この緩和は憲法の理念と立憲主義の根幹にかかわる問題であり、認められません。
 また、96 条改正の先に自民党がめざしている憲法草案は、「公共」を重視し、人権の制限に踏み込み、「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利」(憲法97 条)を否定しています。さらに、憲法9 条の改正をめざし、「国防軍」や「集団的自衛権」なども明言しています。
 私たちは、現行憲法の掲げる「主権在民」「基本的人権の尊重」「平和主義」の理念を積極的に実現していくことこそ、今必要な改革だと考えます。改憲手続きの緩和と自民党憲法草案に強く反対します。

-TPP参加はいのちと安心壊す!安全で公正な貿易を!---

 アベノミクスの中でも重要な位置にあるTPP(環太平洋経済連携協定)は、農産物を含む全品目について10年以内に関税を完全撤廃するのが大原則です。安倍首相は交渉参加の決定に際して、「聖域」(関税撤廃の例外扱い)が認められたからだと言いましたが、日米間の共同声明や合意文書にも、そんなことは何も書かれていません。
 コメや乳製品などが大量に安く輸入され、農林水産業が壊滅的な打撃を受けるだけではありません。TPPは、「非関税障壁」をなくすこともめざしています。食の安全を守るための残留農薬基準や食品添加物の規制が緩められ、遺伝子組み換え作物のラベル表示をしないことも求められます。誰もが・いつでも医療を受けられる国民皆保険制度が崩され、高いおカネを払わないと良い医療が受けられなくなる恐れもあります。外国企業が排ガス規制など環境の規制を受けたことを不満として、政府に損害賠償を訴えることもできます(ISDS条項)。いのちの安全を守るためのルールが取っ払われるのです。
 貿易は“とにかく安ければよい”のではなく、お互いの国の生産者の生存が維持できる所得の保障という公正の原則、消費者の健康や安全の確保、環境と資源の保全という原則に立って行われるべきです。



■  いのちをつむぐ緑のプロジェクト/ 2013 参院選「公約」 ■

(脱原発) いのちと子どもを守るため、原発は今すぐゼロヘ
  -福島を忘れない 福島の悲劇を繰り返すな!
        再生可能エネルギーへシフトし、豊かで健やかな生活を-

  • 原発再稼働と新規建設、核燃料サイクルの継続を止める。原発利益と癒着してきた組織や個人の責任を追及し、「原子力ムラ」の解体を図る。
  • 福島復興と被災者の生活再建は生存権の保障から-「原発事故子ども被災者支援法」の理念に沿った具体化と拡充を図る。同法の支援対象地域は「追加線量1mSv/年以上」とする原則を遵守する。
  • 原発労働者・除染労働者の労働環境の抜本的な改善と被ばく防護対策、健康調査と医療ケアを確立する。
  • 「節電所」など効率的なエネルギー供給の施策とシステムを拡充し、電気を大量に使う社会と生活をチェンジ!
  • 地域分散型の再生エネルギーを2020年までに電力需要の30%に、2050年には100%へ

-未来に向かう再生可能エネルギーへのシフト---

 世界の再生可能エネルギー産業の市場規模は2011 年で39 兆円に成長しており、ドイツでも38 万人分の雇用を産んでいます。ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州(州首相は緑の党)では、すでに再生可能エネルギーの割合は23%に達し、再生可能エネルギー関連の雇用は自動車関連雇用の半分近くまで飛躍的に発展しています。エネルギーと経済を大きくシフトさせるためには、官僚や一部の政治家、業界に「おまかせ」せず、地域からの「市民の政治への参加(参加民主主義)」と、具体的なビジョンを提案・実行していく緑の党の力が必要です。

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②(環境) 開発・大量消費社会から環境保全型社会へ
  -豊かな自然の恵みあふれる社会を子どもたちの手に-

  • 「防災」・「国土強靭化」を名目にした大型公共事業をチェックし無駄な事業をストップ、自然再生型の公共事業へシフトチェンジする。
  • 環境保全型の有機的な農・林・水・畜産業の振興に向けた支援策を充実させる。
  • 生物多様性保全によって環境と調和した持続可能な循環型社会をつくる。愛知ターゲット(註1)の完全実施を目指す。
  • 2020年までに温室効果ガスの25%削減(1990年比)を実現するための着実な対策・施策を実施し、国際合意形成に貢献する。 (註1)愛知ターゲット:人類が自然と共生する世界を2050年までに実現することを目指すため、各国に2020年までに緊急行動を起こすよう「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」で定めた戦略目標。

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③(TPP・経済) 経済成長至上主義からスロー・スモール・シンプルな社会へ
  -地域でモノ・金・仕事が回る経済へ いのちと環境を壊すTPPは要らない-

  • TPP交渉に参加せず、東アジア諸国との公正な貿易・経済協力を実現する。
  • フード、エネルギー、ケア(註2)の分野で仕事を創り地域から経済を活性化する。
  • 非正規労働者に安心と安定を保障するために、同一価値労働同一賃金を実現する。
  • 仕事を分かち合い(ワークシェア)、労働時間を短くし働きすぎをやめて質の良い労働を実現する。
  • 協同組合・NPO・自営など多様な働き方を支援する「協同組合基本法」「協同労働の協同組合法」や「社会的事業所促進法」を制定する(註3)。 (註2)フード、エネルギー、ケア:「フード」は農林水産業や食 「エネルギー」は再生可能エネルギー、「ケア」は医療・介護・子育て・教育などを意味する。頭文字の「F」「E」「C」をとって、これらを自給するエリア を「FEC 自給圏」と呼ぶ言い方(内橋克人)もある。
    (註3)「協同労働の協同組合法」などについて:わが国では協同組合の一般法がなく、農 協・漁協・企業組合・生協など行政庁ごとの閉鎖的な個別法のみで、協同組合の社会連帯という重要な意義が認識されにくい。国際協同組合年の昨年 (2012)、韓国やブラジルで協同組合基本法が相次いで制定・施行されているが日本では未だに成立の見込みが立っていない。

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④(税制・社会保障) 富と負担を公正に分かち合い、消費増税はやめる
  -人として尊重され安心して暮らせる社会へ-

  • 税金のムダ使いを放置し社会保障の充実のないままの消費増税はやめる。
  • 最低賃金・生活保護・基礎年金の拡充で年間200万円の最低所得保障を実現し、将来的なベーシック・インカムの導入に向けた制度設計に取り組む。
  • 官僚の天下りを根絶し、大型公共事業の再開にストップをかけ、ムダな財政支出を減らす。
  • 公務労働の適切な数と質は確保しつつ、給与体系については手当の削減を中心に改革し、それによって生まれる財源を住民サービスの向上・拡充に充てる。
  • 年収3000万円以上・資産1億円以上の富裕層に対し、十分な課税で社会貢献を求める。
  • 法人税を引き下げず、租税特別措置など企業への優遇措置をなくし、法人税の国際的な引き下げ競争にストップを
  • 低家賃の公営住宅の拡充、低所得者への空き家の提供・家賃補助などによって住まいの権利を保障する。
  • 人生前半の社会保障(児童手当、保育サービス、奨学金の無償給付、職業訓練、若者基礎年金など)の充実で「子どもの貧困」をなくす。

  ◆◆◆

⑤(平和) 国内外の市民の交流と連帯で平和な国際社会へ
  -領土争いはストップ。対立ではなく相互理解と信頼関係の構築、
        対話と交渉で北東アジアに平和の実現を-

  • 憲法9条堅持の立場を明確にし、その理念を実現するために平和・外交政策を展開する。
  • 「領土問題」の存在を互いに認め合い、係争地の共同保全や資源管理も含めた対話と交渉による解決を目指す。
  • 米軍と自衛隊が共同作戦する集団的自衛権の行使は認めない。
  • 米軍基地と米兵や米軍関係者に対する国内法の適用範囲を拡大し、日米地位協定の抜本的な見直し・改正を図る。
  • 東北アジア地域各国との相互理解と信頼関係を醸成し、各国のNGOとも積極的な連携を図りながら、非核地帯構想など平和構築へ向けた外交施策を展開する。
  • 東北アジア地域の平和構築と併行し、米国との安保条約の解消と日米友好条約による対等な関係の構築に向け、米国と交渉する。

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⑥(参加型民主主義) 「おまかせ民主主義」にサヨナラし、自分たちが決める
  -徹底した情報公開と市民参加の実現、議会と選挙制度の抜本改革を-

  • 国会の選挙制度は、民意を大きく歪める小選挙区制度を廃止し、比例代表制を基本とする。世界的に見ても異常に高額の供託金制度は廃止する。
  • 市民への徹底した情報公開を実現するための制度改正(「情報公開庁(仮称)」の創設、情報公開法や行政手続法の拡充など)を図る。
  • 議会の安易な拒否を許さない!国民投票は有権者の2%、住民投票は有権者の5%の請求で実施を義務づける。
  • 国会議員の歳費を半減し欧米と同水準に。歳費以外の費用の廃止・削減・透明化を図る。多様な民意を反映するために議員定数は増やす。
  • 政党の党利党略に拘束された議会から公開の場で徹底討論・政策議論する議会に向け、先進的な地方議会改革の実践を活かしながら国会議会改革を先導する。
  • 住民が主役の自治体行政に向け、計画の策定・実行・評価のすべての段階で住民参加を保障する仕組みを実現する。

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⑦(女性・子ども・多様性)多様な生き方を認め合い、子どもとともに未来を育む社会へ
  -誰もが差別も排除もされずに安心して暮らせる社会のための法制度を-

  • 障がいのある人びと、被差別部落の人びと、先住民族や外国系(籍)市民、性的マイノリティなど、少数者の人権や当事者としての権利を保障する。
  • 差別禁止(基本)法を制定する。
  • 性暴力防止施策を実効性あるものにするため、性暴力防止基本法を制定し、DV防止法など関係諸法の抜本的改正や整備を進める。
  • 先住民族や外国系(籍)市民が、その言語を継承し独自の文化を維持し守る権利を保障する。
  • 女性の政策決定過程への参画を促進するために、選挙制度や審議会などで女性に過半数を割り当てるクオータ制を導入し、その範囲の拡大を図る(註4)。
  • 子どもの権利条約を実効化するため「子どもの権利基本法」を制定する。
  • 働き方の多様化と、地域や当事者のニーズを反映する多様な保育・子育てサービスで、安心して子どもを生み育てる仕組みを充実させる。
  • 現場の教師と子ども達が主役となるよう、教育制度を抜本的に改革する。既存の教育制度と異なるさまざまな学びの場を提供するとともに、本人の希望に応じて多様な生き方と技術を習得できるよう、教育体系の質的拡充を図る。
  • かけがえのない存在としての自己を肯定する感情や他者のいのちも尊ぶ感覚を育む教育を充実させる。
  • 女性の置かれている労働環境(職場での不均等待遇など)を改善するための制度や施策の充実・整備を図る。 (註4)緑の党は、共同代表、全国協議会、運営委員会、参院選候補者の選定過程で女性を半数以上とする原則を採用している。

-いじめ問題は社会全体の問題---

 深刻ないじめ問題に対し、政府の「教育再生実行会議」は道徳教育や加害者の出席停止・警察との連携などの対策を提言しましたが、「規範意識」の強化のみでは根本的な解決になりません。2010 年、国連子どもの権利委員会は日本の教育を「過度に競争的な学校環境が子どもの人格の発達に否定的な影響を及ぼし、いじめや不登校などを助長している」と指摘しました。教職員の管理強化や多忙化、情報の隠ぺい体質が指摘される教育委員会のあり方も見直す必要があります。
 子どもの権利条約を基本に据え、子どもがあらゆる暴力から守られる権利、多様な教育を受ける機会が保障されることが重要です。また、子どもたちが主体となり、未然防止の段階から自発的に取り組むいじめ防止プログラムの導入、いじめ問題に取り組む第三者機関の設置などが必要と考えます。



緑の党のこだわりの主張 ■

1.女性の社会・政治への参画を高める

 男女平等の実現は、公正で持続可能な社会の創造にとって最も重要な課題です。このジェンダーの視点は、緑の党のあらゆる政策分野に貫かれています。
 日本の国会議員の女性比率は7.9% で、世界190カ国中162番目です(衆議院)。スウェーデンやドイツ、ルワンダなどではクオータ制を導入して女性比率を高めています。
 民間企業の女性管理職の割合も先進国最低の8.7%(30 人規模以上の企業、係長級以上)です。働く女性の3 分の2 は給与が年300 万円以下。2 人に1 人が非正規雇用で、賃金は男性の半分です。また、第1 子出産後に仕事をやめる女性が62.0%。理由は子育て負担の女性への集中、保育所不足などです。
 一方で、配偶者からの暴力を受けた女性は32.9%。経済力がなく離婚したくてもできないために我慢するという社会の構造があります。
 女性が働きつづけ、社会や政治への参画を高めていける環境を創っていくことが、だれもが生きやすく、いのちが最優先にされる未来に着実につながっていきます。

  • 女性の政策決定過程への参画を促進するために、選挙制度や審議会などで女性に過半数を割り当てるクオータ制を導入し、その範囲の拡大を図る。
  •  女性の置かれている労働環境(職場での不均等待遇など)を改善するための制度や施策の充実・整備を図る。
  • 働き方の多様化と、地域や当事者のニーズを反映する多様な保育・子育てサービスで、安心して子どもを生み育てる仕組みを充実させる。
  • 性暴力防止施策を実効性あるものにするため、性暴力防止基本法を制定し、DV 防止法など関係諸法の抜本的改正や整備を進める。

2.若者が希望を持てる社会へ

 多くの若者が将来へ希望を持てずにいます。15 〜24 歳では半分近くが非正規雇用、失業率9.9%、6 割が年収200 万円未満です。緑の党は、どんな働き方でも不公平にならず、失業しても何度でもチャレンジできる仕組みの構築をめざす一方、働き方の多様化で若者を応援します。日本中の地域に働く場を創り、誰もが安心して暮らせる社会をめざします。

  • 多様な働き方/ 就労に必要な知恵知識/ 労働者の権利を学ぶ機会を教育に組み込む。
  • 給付型奨学金を拡充する。
  • 住まいの保障を含む若者基礎年金で30 歳以下に年収200 万円を保障する。
  • いかなる条件の人でも職業訓練とその期間中の生活所得保障を受けられるものとする。
  • 非正規雇用と正規雇用の均等待遇で、格差縮小に導く。
  • ワークシェアリングで、労働時間/ 収入/ 売上/ 仕事の分かち合いを促進する。
  • 高齢社会に向けて、福祉関係の職の賃金保障と労働条件を改善する。
  • 地域に根差した雇用・経済の建て直しを図り、若者を中心に60 万人の雇用を創出する。
  • 地方の空家と遊休農地の斡旋でI ターンを促進し、ライフスタイルを消費型から創造自給型へ促し、小さな収
    入で暮らしが可能になるような仕事と生業創りの応援をする。性の政策決定過程への参画を促進するために、選挙制度や審議会などで女性に過半数を割り当てるクオータ制を導入し、その範囲の拡大を図る。

3.アイヌ民族の権利回復を

 アイヌ民族は長年に渡って固有の文化や生産手段を奪われ、差別的な植民政策により貧困を強いられ、現在も多くの世帯が経済的に困難な状況にあります。アイヌ民族は日本の先住民族として国際的には認知され、国内では2008 年6 月6 日、「アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議」が衆参両院の全会一致で採択されました。しかしその後、残念ながら具体的な政策は進展していません。
 政府と国会は、アイヌ民族の権利回復に積極的に取り組むことを明確に意思表示し、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007 年国連総会)に示された先住民族の土地・資源に関する権利や自己決定権などを反映させるための法制度の整備を進める必要があります。
 また、諸権利の回復と同時に、アイヌ民族が継承してきた伝統文化や技能や言語を大切に守り育てることも重要です。そこに表現されている自然と共生する人間の生き方や価値観・世界観、チャランケ(アイヌ語で「話し合い」)による紛争解決の精神などは、広く市民に共有される文化的価値でもあります。

  • アイヌ民族に対する同化政策の誤りを認め謝罪する国会決議の採択をめざす。
  • 「先住民族の権利に関する国連宣言」に記されている諸権利の法制化をめざす。
  • アイヌ民族に関連する政策をアイヌ民族自らが審議・決定するための公的代表機関およびアイヌ民族議会を設置する。
  • アイヌ民族に関連する政策推進を所管する責任担当大臣・官庁を明確化させる。
  • いわゆる「北方領土」の返還交渉については、アイヌ民族の先住権に基づき、アイヌ民族の代表が交渉に参加することを求める。旧千島列島については、アイヌ民族の先住権に基づきアイヌ民族に返還することを求める。


■ 参議院選挙への挑戦にあたって■

私たちがめざす議員像みんなで一緒に国会に乗り込もう!

 「永田町政治」の数の論理では新しい発想は生まれません。緑の党は国会議員と市民が対等な立場であるべきと考え、国会議員と共同代表の兼務を禁じ、議員も一人の市民として社会や市民活動に参加します。諸外国に比べても高すぎる議員報酬は「半減」を提言し、立法事務費・文書交通通信費などの全容と使途を公開します。また、議員だけで物事を決定せず、会員や市民との議論を大切にします。
 政治を変えるためにまず市民が動くことが重要です。そして国会議員は、市民の声に常に寄り添いながら、行政機関や情報への容易なアクセスや調査権などを活用し、市民の活動をサポートします。官僚や超党派の国会議員と市民との意見交換も積極的に進め、市民とともに議論しながら国会での質問や施策・法案の実現に発展させます。
 また、緑の党は、市民に身近な自治体で市民派議員として活発な活動や経験を蓄積してきた多くの地方議員も60人以上が参加しています。そのネットワークと経験を活かし、市民の暮らしや地域の経済など切実な課題を国の政策議論に結びつけていきます。

参議院から合意と熟議の国会改革を

 参議院には「衆議院の議論を繰り返すだけ(衆議院のカーボンコピー)」といった批判もあります。しかし、頻繁に解散のある衆議院と比べて、参議院はその時々の政治的な「雰囲気」などに左右されず、冷静で時間をかけた議論を尽くすことが本来の役割です。実際、参議院は衆議院よりも無所属議員や小会派にも配慮されて運用されており、これまでも公共事業のチェックなどで重要な役割を果たして来ました。緑の党は少数でも参議院の中で力を発揮し、市民社会や議会内での熟議民主主義を大切にしながら、市民とともに開かれた国会改革を実現します。