原発ゼロは今そこにある現実

(1)事前の政府見通し

政府は、昨年2012年5月18日、エネルギー・環境会議と電力需給に関する検討会合を合同開催し、「今夏(当時)の電力需給対策について」を発表しました。これは、「今夏、原子力発電所の再起動がない場合」を想定しての見通しです。

 これによれば、少なくとも東日本においては原発がなくとも、2012年夏季想定需要(猛暑・節電あり)より4.0%多い電力供給を確保できる見通しでした。但し、政府は関西電力(以下「関電」)管内では約2割の不足が生じると「予想」し、これを大飯原発再稼働の根拠としていましたが、この予想は事実に反するものでした。

(2)NGOの見通し

特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(以下「ISEP」)は、2012年4月23日に発表したブリーフィングペーパー「原発を再稼働しなくても夏の電力は足りる」において、「今夏、全ての原発が停止したままでも、電力ピーク時に全国で16%以上、東日本3社に限れば24%以上の電力需給の余裕を確保することができるはず」と予測し、関電管内においてすら、6%の余力が見込まれていました。

 

 

 2012年8月のピーク時の電力需給予測(政府およびISEP推計の比較。出典:ISEP)

需要  (昨年並み節電)

設備と供給力予測

供 給 予 備 力

備     考

設備容量

供給力 (ISEP)

供給力(政府)

予 測         (ISEP)

予 測       (政府)

北海道電力

485

650

570

474

85

0

▲11

▲2%

政府想定は真夏に定期検査(70万kW)

東北電力

1,246

1,738

1,539

1,462

292

0

216

0

 

東京電力

4,922

6,310

6,115

5,707

1,193

0

786

0

 

中部電力

2,520

3,196

2,859

2,646

339

0

126

0

関電に70万kW(政府4/13資料)

北陸電力

533

701

592

579

59

0

46

0

関電に3万kW(政府4/13資料)

関西電力

2,784

2,922

2,946

2,630

162

0

▲154

▲6%

追加対策150万kWは設備に含めず

中国電力

1,083

1,456

1,309

1,237

226

0

154

0

関電に37万kW(政府4/13資料)

四国電力

544

664

624

547

79

0

3

0

政府想定は他社に17万kW融通

九州電力

1,544

1,668

1,654

1,588

110

0

45

0

 

9社計

15,661

19,354

18,207

16,870

2,545

0

1,209

0

(沖縄電力を除く)

東日本3社

6,653

8,698

8,223

7,643

1,570

0

990

0

 

中西日本6社

9,008

10,657

9,983

9,227

975

0

219

0

(沖縄電力を除く)

・政府予測の供給力は経済産業省(2011/11)、ただし4大臣会合資料(2012/4/13)の関電融通分を反映
・関電分は4大臣会合資料(2012/4/13)
・設備容量は、停止原発を除く

 

(3)現に電力不足は生じていなかった

 実際には、関電管内ですら、大飯原発を稼動させなかったとしても、十分な余力が確保されていることが明らかとなりました。

 すなわち、最も需要が大きかった2012年8月3日においても、最大需要は2,682万KWと、ピーク時供給力の2,999万KWを大きく下回りました。供給力と最大需要の差は317万KWであり、この値は、大飯原発3,4号機の合計出力236万KWを上回ります。また、周波数が関電と同じ60ヘルツで電力を融通しやすい中部電力以西の電力5社の供給余力は、合計で約670万KWありました。従って、2基が稼働していなくても、供給力に問題ない状況だったのです。9月14日に政府が発表した電力需給の検証結果を見ても、関西電力や中部電力を含む中西日本全体では、大飯原発の稼働なしに8%以上の予備率が確保できたとしています。

もちろん、原発が稼働していなかった他の地域でも、電力不足は生じませんでした。従って「原発ゼロ」は、今後の目標というより、今すでに、私たちの目の前にある現実なのです。政府は「電力需給のために必要」として大飯原発の再稼働を強行しましたが、夏のピーク時を乗り切れたのですから、まずは速やかに大飯原発の稼働を停止すべきです。また、敷地内に活断層が存在する可能性さえ指摘されるに至った以上、一刻も早く運転を停止すべきであることは言うまでもありません。