(保存用)政策②生きものにぎわい、豊かな自然の恵みあふれる日本を子どもたちの手に!

 

② 生きものにぎわい、豊かな自然の恵みあふれる日本を子どもたちの手に!

 

現状と課題

 

はじめに

 

 森林率は世界第2位、海岸線の総延長は世界第5位で日本近海は世界で最も生きものの種類が多く、河川の数は約14000と多様で豊かな自然に恵まれ、生きものにぎわう日本。こんなにも豊かだからこそ、自然災害も地震、津波、台風と多く、私たちは災害さえ自然の在り様の一部とらえ、荒ぶる自然を受け止め、付き合っていく知恵を歴史的に育んできました。しかし、私たちの社会は豊かな自然を犠牲にし、農業、林業、漁業などを縮小させ、伝統的な里山・里海の暮らしや文化を切り捨て、あくなき経済成長と便利さを追いかけました。いまや道路の総延長距離は地球30周分、ダムの数は河口堰などを除いても約2700、原発は54基と豊かな国土をコンクリートと鉄で覆い尽くしてしまいました。そんな私たちが、行き着いた先は3・11東日本大震災における福島原発事故でした。

 3・11は、自然から遠ざかった私たちの文明の帰結点であることを真摯に受け止めなくてはなりません。「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし。古来の文明を野蛮に回らす。今、文明は虚偽虚飾なり。 私慾なり、露骨的強盗なり」と明治45年に、足尾銅山鉱毒事件に取り組んだ田中正造の嘆きは、まだこの国を覆い続け、そのまま原発をめぐる状況にあてはまります。3・11は、単なる自然災害ではなく虚偽虚飾の文明の災害です。今後、科学的技術の暴走が招いた不確実性事象の増加に対して、リオ宣言第15原則にある「科学的に明らかになっていないことを対策や措置を怠る理由にしてはならない」という予防原則を環境政策の基軸にすえ、人と自然がせめぎあいながらも恵みをいただく叡智を取り戻していかなくてはなりません。私たち日本人の未来は、緑したたる木々、清い川のせせらぎ、光る海原、豊穣の大地の中にこそあります。

 

気候変動対策によって持続可能な社会への一歩を踏み出す

 

 全世界で起きている記録的な熱波や豪雨などの異常気象は、人々の身体、生命、財産に対して被害をもたらすのみならず、生態系を破壊し、多くの自然災害をひきおこし、食料確保を困難にし、途上国の貧困をさらに厳しいものにしています。ツバル等の島嶼国は、海面上昇により水没の危機にさらされています。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年に公表した第4次評価報告書によれば、温暖化の原因が、産業革命以降の人間活動の飛躍的拡大に伴うCO2等の温室効果ガスの過剰排出であるとし、将来の気温上昇が急速なスピードで進むことを予測しています。

 これに先立ち、気候変動枠組条約は気候変動に対し、「共通だが差異ある責任」を明示して先進国には相応に大きな責任があるとし、1997年に採択された京都議定書では先進国間にCO2排出削減の明確な数値目標が示され、日本は2012年までに90年比6%削減という国際的な責任を法的に負担しました。2010年の決議では、産業革命以降の地球の平均気温の上昇を2℃以内に抑えるという目標設定がなされました。

 このような状況の中、EUを中心に排出ガス削減に向けた努力が行われ前進をみたものの、日本では、経済界の強力な抵抗もあり、具体的な政策は遅々として進みませんでした。さらにリーマン・ショック以降の未曾有の経済危機が深刻化する中、2011年3月11日、東日本大震災、福島第一原発事故が発生したことにより、東北地方の復興を中心とする景気回復、そして脱原発が、全国民にとって最大の関心事となりました。そして、地球温暖化対策のための原発政策推進というプロパガンダが浸透していたこともあり、CO2排出削減、排出量取引等のキーワードは、すっかり存在感を失ってしまいました。世界の中で取り残されつつあった気候変動への取組みは、さらなる後退を余儀なくされています。

 しかし、気候変動対策は、持続可能な社会を実現において重要な位置を占めています。地球がティッピングポイントを迎ようとしている現在は、間違いなく文明史における歴史的転換期です。従来の大量生産、大量消費、大量廃棄に支えられた経済成長至上主義から脱却し、まったく違う新しい価値観に基づいた新しい社会とは、右肩上がりを前提としない抑制された経済、すなわち低炭素経済・低炭素社会の創造にほかなりません。

 例えば、これまでの人口増加と都市の拡大をコンセプトにした都市計画や道路整備計画は、バイパスによる郊外型大規模商業施設の誘致などによる車依存型ライフスタイルを生み出し、CO2の排出増加、公共交通機関の利用減少をもたらしてきました。このような都市計画を抜本的に見直し、公共交通を基幹交通機関とし、路面電車の復活、鉄道とバスの円滑な連携、商店街の再生など、徒歩で生活できるコンパクトシティを推進する必要があします。

 このように、気候変動対策に取り組むことは、新しい時代にふさわしい新しい社会を構築することであり、持続可能な社会への一歩となるのです。

 

鉄とコンクリート中心主義から自然共生型の事業へ ―巨大開発事業問題―

 

 山を削り、川をせき止め、海を埋め立て、日本は国土を改造し、各地にダム、道路や新幹線、原発、基地を建設することで経済成長を成し遂げてきました。立派な道がどんどんでき、川や海の周囲はことごとくコンクリートで護岸され、自然林は次々と姿を消す一方で、都会は膨張し続けていくことが発展だと多くの人は信じてうたがわず、日本は、コンクリートやアスファルトで覆い尽くされてしまいました。どれほど貴重な自然がそこに存在しようとも、お金や経済成長だけを価値基準として自然は無価値なものとされてきました。

 たくさん壊し、たくさん造り、利権を生み出す土建国家であることが日本の発展につながるという信念が幻想であることがいまや明らかです。開発事業のほとんどが、需要や生活基盤に必要なものとして計画されたものではなく、一時的な雇用促進や税金をゼネコンの収益とするためのものであり、官僚、政治家による汚職、談合など社会的腐敗の温床となっています。地域においても、公共事業による雇用や補助金なしでは、地域経済が成り立たないという構造を生み出し、地域自立の大きな妨げとなっています。本来豊かな自然資源を持っていたはずの地域は、自然を無価値とする価値観のため、お金とひきかえに、原発をはじめとする都会のためのエネルギーを作り、また都会が生み出す廃棄物の捨て場所になっています。

 すでに国内の生産設備は過剰であり、経済的波及効果はないにもかかわらず、投入した税金を食いつぶしているのが現状です。人の生産活動を円滑にするためには、鉄とコンクリートによる自然克服型の開発事業ではなく、自然とのバランスに配慮し、生態系の循環を断ち切ることのない自然共生型の事業こそが求められています。自然環境の破壊、さらには税金の膨大な無駄使いや汚職を生み続けている巨大開発事業をチェックし中止することは、生物多様性や自然と共生する暮らしの創出のために避けては通れません。

 

生物多様性(種の多様性、生態系の多様性、遺伝子の多様性)保全のために愛知ターゲットの早急な実施を

 

 生物多様性とは、たくさんの種類の生きものが、お互いに関係しあって命の輪を作っているあり方のことです。地球上には、知られているだけで約144万種、未知のものを含めると1500万種以上もの生きものが生息していると言われています。そのすべての生きものは、食物連鎖などのように他の生きものと何らかの関係を持って生きています。私たち人間も食べ物、水、土壌、酸素のような生存に必要なものから、文化的、知的、精神的な営みまで、すべて他の生きものとの関係の中で得ています。私たちの食料の多くが、ミツバチの受粉に依拠しており、ミツバチが絶滅すれば人はたちまち食料不足に陥ってしまうように、人間だけでは生存できず、生物多様性=命の輪からはずれることはできません。

 現在の地球上では、7分間に1種類、1日に200種というすさまじい勢いで生きものが絶滅しており、これは6500万年前恐竜時代の大絶滅以来のできごとです。日本でもすべての生態系に及んでおり、現在も進行中です。日本人にとって身近な存在であったスズメは、1960年代に比べると10分の1に激減、メダカは2003年に絶滅危惧種としてレッドデータブックに記載されました。元来、日本人が持っていた自然と共生する歴史や価値観を再評価し、多様な生きものとともにある暮らしを取り戻さなくてはなりません。

 2010年COP10における愛知ターゲット(http://bd20.jp/know-aichi-target/about-aichi-target/ )は、日本政府が議長国としてリーダーシップを取り採択された20の目標です。しかし未だ愛知ターゲットに基づく国内での政策、法整備は、ほとんど行われていません。日本の環境政策を抜本的に見直すことになる愛知ターゲットの実現に至急取り組まなければなりません。

 

日本の豊かな海を取り戻す

 

 日本近海は、生物種の多さは世界一、排他的経済水域面積は世界第6位、大陸棚上に位置しており、世界屈指の漁場を多く持つ魚湧く海でした。しかし、現在では生産力の高かった河口部の内湾において富栄養化による赤潮、青潮が頻繁に起こり、汚染によるヘドロ堆積や藻場の減少、護岸による海洋生物の産卵場所の減少など深刻な事態になっています。日本の沿岸には、河口汽水域、干潟、藻場、磯、砂浜、サンゴ礁、マングローブにいたるまで多様な生態系に恵まれていましたが、埋立てや干拓、廃棄物捨て場、護岸、砂利の採取などによって自然環境の破壊が続いています。

 さらに、福島第一原発事故による海洋への放射能物質の流出は、深刻な事態を引き起こしつつあります。原発から直接流出するものだけでなく、汚染された山々の放射能物質を集める形で河川を通じて海洋に流れこんでおり、自然生態系への被害は計り知れません。今後、放射能による海洋汚染については、時間が経過するほど深刻になると予想され、東京湾が最も高濃度になるのは3年先という指摘もあります。にもかかわらず、いまだ放射能調査がまともに行われていないのは大問題であり、至急モニタリングに取り組まなくてはなりません。

 地球規模においても、日本によるマグロやウニなどの乱獲、大量消費は、深刻な問題をもたらしています。工業優先で豊穣の海を汚染させながら輸出産業が外貨を稼ぎ、水産物を大量に輸入しているあり方は、沿岸漁業を衰退させ、世界の海をも疲弊させてきました。日本近海では、多くの魚種の資源状態が「低位水準」(FAO報告)であり、漁業就労者は20万人まで減少しています。水産業のあり方を至急見直さなければなりません。

 防災の観点からは、護岸や防潮堤のあり方を見直す必要があります。東日本大震災における津波被害調査において、防潮堤を作ったことにより安心し、防潮林を伐採開発して住宅地にした地域がほとんど壊滅状態になったことが指摘されています。また、漁師たちからは、高い防潮堤があることによって海が見えにくくなったことが被害を大きくしたと指摘されています。海岸に直角に作られた道路は津波の経路となり防潮林が意味をなさなくなるなど、コンクリート防潮堤依存による被害の拡大を正確に調査しなければなりません。海岸線の防災は、コンクリート巨大防潮堤建設依存から脱却し、自然の海岸線再生も含めた沿岸管理に取り組む必要があります。

 

森と川を命つながる生命流域として再生する

 

 日本の豊かな水は、森林でたっぷりと育くまれ、川を通じて海に流れ込み、大気に昇り、再び山と出会って雨水になり森に返ってきます。水を通じた命の循環こそが、豊かな日本の自然を支えています。森林や河川の環境破壊は、この水循環を断ち切る愚行であり、河川を上流の森林から海まで一連の生態系として捉える必要があります。

 森林の荒廃は、そのまま川や海の荒廃につながっています。河川は、森林の栄養分を水とともに海につなげる重要な役割を持っているにもかかわらず、ダム、堰、コンクリート護岸、直線化などの河川改修によってその役割を担えなくなっています。河川改修は、生物の産卵場所や隠れ家を奪い、日本全国すべての河川において、魚類、昆虫、鳥類が減少、絶滅をしています。都市河川の護岸や直線化は、東日本大震災の際に、津波が一気に河川を駆け上り、上流域に到達するなど被害を大きくしており防災上からも多くの問題があります。

 日本の国土面積の約70%は森林におおわれ、森林率は世界第2位ですが、戦後の木材需要による国策としての拡大造林政策により、原生的で生物多様性が豊かな天然林は、残り少なくなっているのが現状です。本来豊かな山林資源を有するはずの日本の木材自給率はわずか20%です。日本の安価な外材輸入は、世界の森林を破壊し、国内では林業の破綻や放置林による土砂崩れの頻発などをもたらしています。国産木材を使用した長寿命住宅の建築や、ペレット活用などの間伐材を含む国産材の利用を促進が必要です。また、災害時の仮設住宅はプレハブ建築がほとんどを占めていますが、これはプレハブ業界が現在47都道府県と契約を結んでおり、独占しているからです。災害時の仮設住宅などにも間伐材など国産材を使用します。そのためにも里山再生の取り組みは重要です。戦後拡大造林された民有林の所有者は次世代に移っており、所有権が分散し、森林整備の手続きが遅々として進みません。森林資源を活用しやすい里山には民有林が多くを占めており、森林の土地法整備が必要です。無計画な都市化を防ぐためにも、国が借地料を支払って管理し、単層林から複層林への整備、森林資源の有効活用を推進しなければなりません。

 水資源についても国民の共有財産としてしっかりとした管理が必要です。現在、外資系、国内資本を問わず、ボトルドウォーター販売目的の地下水の汲み上げが行われ、地盤沈下や生態系破壊が懸念されています。表流水については水利権により厳格に規定されていますが、地下水利用については地盤沈下地域以外ではルールが曖昧なのが現状で、早急な対策が必要です。

 森、川、海をつなぐ水の流れを変えたり止めたりしてはいけません。それは、命の流れを止め、自然の循環を止めてしまうことにほかなりません。

 

ごみや有害物質を徹底的に削減する社会へ

 

 循環型社会という言葉は広まり、循環型社会をめざすとした法律の制定もされましたが、製品にダイオキシン類等の有害物質を使わないこと、または廃棄物の量を減らすことについて、生産者(主に製造業者)に十分な責任を負わせるものではないため、現在まで、ごみの減量化、ごみ処理の安全性は実現していません。例えば、プラスチック類は、中間処理過程などでダイオキシン類を発生させるおそれが指摘されていますが、環境省は「熱回収」とよばれる焼却処理を推進しており、焼却量が年々増加しています。いっこうに減らないごみを処分するため、安全性の確保が後回しにされたまま焼却施設、ごみ処分場の建設がすすめられ、紛争が絶えません。

 廃棄物問題のもう一つの課題は、不十分ながらも既にある規制について、違反行為があっても取り締まりが十分になされず、規制の実効性が乏しいことです。いわゆる「不法投棄」(法律が定める方法・場所に違反してする廃棄物処理)は、文字どおり違法行為ですが、2008年度の不法投棄量は、20万トン超と膨大な量にのぼっています。不法投棄が禁止されていても、警察や自治体、環境省などの規制権限が不十分であったり、適切に行使されなかったりすることから、違法行為が後を絶ちません。香川県の豊島の例だけをみても、不法投棄は長期にわたり地域に深刻な環境被害を与えるものであり、厳しい取り締まりにより根絶されなければなりません。

 また、資源採収、流通、販売にいたるすべてのプロセスで、ごみの発生を抑制するためのシステム作りが必要です。

 

公開・参加・司法アクセスを確保し、環境行政の健全化を図る

 

 公共事業や国有林、河川、海洋の管理など環境保全に重要な政策は、国交省、農林水産省など推進官庁と保全官庁が一体化しており、健全なチェック&バランスが機能していません。他方、環境省は、権限、予算、人的資源が他の省庁と比較しても非常に少なく、自然破壊を伴う事業のチェック機構として役割を果たせておらず不健全な状態です。

 これまで常に行政は、都合の悪い情報は公開しようとせず、政策決定等への国民の参加を阻害しています。さらに、国民が裁判によって行政活動に対する司法判断を求めようとしても、原告適格、処分性等、入口の高い壁に阻まれ、中身の審査にたどり着くことさえ難しいのが現実です。

 健全な環境行政を実現するためには、国民への情報公開、国民による政策決定、立法プロセスへの参加、そして国民の司法アクセスの確保が不可欠です。

 

個別政策

 

<気候変動対策によって持続可能な社会への一歩を踏み出す>

 

  1. 温室効果ガスについて、1990年比で2020年までに25%削減、2050年までに80%削減という目標を設定し、その達成に向け着実な対策を実行する。
    ※予算の裏付けやロードマップ作成を行う。
  2. キャップ&トレード型国内排出量取引制度(温室効果ガスの排出枠に上限“キャップ”を設定し、排出枠を割り当てられた参加者の自由な売買“トレード”を認める制度)を導入する 。
    ※一定規模の事業所に対して適用する
  3. 化石燃料に課税し需要を抑制する炭素税(環境税)を導入する。
    ※石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料に、炭素の含有量に応じて税金をかけて価格を引き上げることで需要を抑制し、排出量取引の対象とならない中小事業所や家庭、交通部門で必要量に応じて課税し、その消費削減を動機づけることでCO2の排出量を抑える。
  4. 国際合意形成に積極的に貢献し、途上国支援に積極的な役割を果たす。

 

<自然破壊を伴う開発事業から自然再生型事業へ>

 

  1. 沖縄県普天間基地返還による辺野古海域への新基地建設、やんばる地域の自然を破壊する東村高江地区の米軍ヘリパット基地建設を中止する。
    ※沖縄防衛局の提出した環境影響評価書は、建設を前提とし欠陥が多いため正式なものとして認められない。ジュゴン保護に関するIUCN勧告および決議にそった環境影響評価書に基づき大浦湾海域、ジュゴンの保護を実現する。
    ※やんばる地域は、ノグチゲラ、ヤンバルクイナをはじめ、固有種が23種にものぼる生物多様性の宝庫であり、基地や林道はもちろんのこと未来にわたり、森の伐採はしない。
    ※米国に対しては、交換条件なしの北部訓練場返還交渉を進める。
  2. 沖縄県泡瀬干潟の埋め立て計画を中止、すでに埋め立てた部分は自然を再生し、ラムサール条約湿地ならびに国立公園として登録する。
    ※泡瀬干潟に限らず沖縄県は、海、森問わずいたる所に貴重な植生や生物が存在し、自然そのものが重要な観光資源でもあるため、むやみな開発による自然資源の損失は認められない。うるま市島嶼地域を候補地とするIR(統合型リゾート)によるカジノも含めた巨大リゾート建設、及びそれを可能とする「エンターテイメントリゾート法」は認めない。
  3. 環境破壊の可能性があるダム工事は事業を停止し情報公開のもと再検討、完成したダムについても公開のもとに検証しなおし問題がある場合は撤去する。
    ※関連事業も含めて一旦事業を停止する。
    ※長年のダム計画で破壊されてきたダム予定地の再生、住民の生活再建に早急に取り組む「生活再建支援法」を策定する。
  4. リニア中央新幹線は、大規模な自然破壊、電磁波の悪影響、電力の大量消費による原発の推進を及ぼす可能性が高いため中止する。
    ※リニア中央新幹線は、ルートの大部分が地下大深や山岳部を貫く、1都2府8県にまたがるこれまでに例がない大規模な地下開発である。
    ※中部電力は、リニア中央新幹線を浜岡原子力発電再稼働の口実にしようとしている。
    ※リニア中央新幹線で懸念される電磁波問題を明確にするために、電磁波の人体への影響について調査、研究を行う。
  5. 現在計画中あるいは建設中の無駄な道路建設を中止する。
    ※すべての高速道路の費用便益計算、環境影響評価を見直す。
    ※圏央道高尾山トンネルのようにすでに供用されており自然への影響が懸念される地域については、自然環境への事後影響を調査し、生態系への悪影響を軽減する対策をとる。
  6. 潮受け堤防を段階的に全開門し、諫早湾干潟および有明海を再生保全する。長良川河口堰を開門し、将来的に撤去し長良川を再生保全する。
    ※開門後も調査を続け、結果は一般公開し、有明海全体の生態系修復事業に着手する。
    ※経済的に壊滅的な打撃を受けた漁民の救済措置を最優先で実施し、干拓地農民に対しても排水機場の設置などの救済を行い、農業と漁業が共存できる政策を行う。

 

<多様な生きものにぎわう国土へ>

 

  1. 愛知ターゲット目標11(最低でも陸域及び内陸水域の17%、また沿岸域及び海域の10%を保護地域に指定する)に基づき、生態系の代表性、連続性などに考慮した保護地域を拡大する。侵略的外来種とその定着経路を特定し、制御または根絶の対策に取り組む。
    ※日本生態学会による「日本の侵略的外来種ワースト100」を優先的に
  2. 生物多様性に有害な奨励措置(補助金など)を廃止し、保存や賢明な利用のための奨励措置を策定し適用する。市民による自然環境調査を資金的援助もふくめ積極的に推進、活用する。
    ※特に原発関連の補助金は即刻、廃止されるべき。
  3. 生物多様性の保全と持続可能な利用に関する先住民族・地域共同体の文化的、知的遺産を尊重し、完全な関与を実現する。
    ※開発事業などの行為は、その開発内容や範囲、目的などについて、先住民族・地域共同体に対し、事前に完全な情報公開を保証する。
    ※伝統的知識に科学的根拠がないことを理由に対策を行わないことは認められず、予防原則にしたがって実施する。
  4. 環境再生型公共事業を企画段階から市民参加型事業として推進する。
    ※現在の自然再生推進法は、一部で再生事業が開始されているものの工事入札がゼロという事例もあり、再生や保護が、十分に進められているとはいえない。

 

<いのち育む海を取り戻す>

 

  1. 沿海水産資源の保護と持続可能な利用に取り組む 。
    ※漁港整備など公共工事偏重の水産予算を見直し、生態学の科学的データに基づいた資源の保護および持続的利用を徹底するため、農林水産省から水産庁を独立させ水産省に格上げし、健全な運営をなすべきである。
    ※中長期的に漁業者にも恩恵のある海洋保護区の設定を行う。
    ※日本海沿岸の海洋資源の持続的利用を可能にすることにより、グローバル経済による海洋資源の乱獲や大量輸入に歯止めをかける。
  2. コンクリート防波堤依存から脱却し、防災も含めた新たな沿岸管理を構築する。
    ※東北沿岸部で計画されている巨大防潮堤を見直し、地域の自然環境に適合した防潮林の育成とその持続的管理を行う。
  3. 海洋の放射能汚染調査を早期着手、長期、広範囲の実施を行う

 

<豊かな水を育む流域の再生>

 

  1. コンクリート護岸と直線化した都市型河川を自然再生する。
    ※コンクリート護岸は多自然型護岸へ変更する。
    ※都市型河川は、蛇行させ、自然の水の流れに逆らわない河川に戻す。
  2. 上流域、中流域、下流域を一連の生態系ととらえ、行政区分を超えた河川再生に取り組む。
  3. 森林保護制度は林野庁から環境省に移管し、また民有林活用による里山保全のための土地法制を整備し、森林保護を徹底する。国内の森林資源を積極的に活用する。
  4. 水資源利用は、自噴泉のみ認め、地下水については国際的に通用する水資源利用のルールを作るための調査、議論に着手する。

 

<ごみを徹底的に削減する社会へ>

 

  1. ごみの徹底した削減のために、生産段階からごみと有害物質を減らす「発生抑制」を基本にリサイクルよりリデュース(減量)、リユース(再利用)を優先させる循環型社会の設計図を作る。
    ※資源採取、製造、流通から廃棄に至る過程で、ゴミ排出がより少ない製品を選べるように消費者に価格インセンティブを与えるなど、生産段階からごみと有害物質を減らす「発生抑制」を基本とする。リサイクルよりリデュース(減量)、リユース(再利用)を優先させる循環型社会の設計図を作る。
    ※容器包装リサイクル法など、各リサイクル法を改正し、ごみ処理費用を企業が負担する「拡大生産者責任」の原則を導入する。
    ※国が定める処分場の設置許可基準等の基準は、ナショナルミニマム(最低限の共通ルール)であることを法に明記する。
    ※焼却施設からの排ガスについて、排出基準を定める有害物質を追加する。
    ※焼却施設から排出されるダイオキシン類について、連続的な測定を義務付ける。
    ※焼却施設や産業廃棄物処分場の建設、運営について、住民の参加により規制を守らせるルールをつくる。例えば、建設時に地元住民が一定数以上入る審議会設置の義務づける規定、運営にあたり定期的に強制立ち入り権限をもつ監視委員会の設置を義務付ける規定など。
    ※国に、環境・安全規制の遵守をチェックする独立行政委員会(環境監視委員会)を設け、住民からの不服申立てによる建設手続等についての審査権、事故や不正に関する調査権限、勧告権等必要な権限を付与する。
    ※地方自治体が、上乗せ条例により、産廃Gメンなどを組織し、闇の勢力の活動を抑制できるよう、モデル条例案を提案する。

 

<公開・参加・司法アクセスを確保し、環境行政の健全化を図る>

 

  1. 環境省の健全化、抜本的な強化を行う。
    ※環境省の健全化については、NGOから人を送り込む。
    ※経産省、国交省等に分散する環境行政に関する権限を環境省に集中するとともに、予算、人的資源を強化する。また、自然環境に影響を与える事業の推進官庁と保全官庁を分離し、保全官庁は環境省内に移管し、監督する権限を環境省に持たせる。
  2. 「事業を実施しない」という選択肢を含む代替案を義務づけるなど、実効性のある環境アセスメントを実現するための法改正を行う。
    ※個別の事業の計画・実施に枠組みを与えることになる計画(上位計画)や政策を対象とする環境アセスメントである戦略的環境アセスは、環境影響評価法の改正によっても、極めて中途半端な「日本版戦略的環境アセス」にとどまっている。「事業を実施しない」という選択肢を含む代替案を義務付ける等、実効性のある環境アセスメントを実現するための法改正を行う。
  3. オーフス条約(環境に関する情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセスに関する条約)に加盟し、政策決定や立法プロセスへの実質的な国民参加の仕組みを導入する。
    ※環境保護団体等が原告となれるよう、団体訴訟を認める。
    ※処分性を緩和し、計画段階での司法審査を可能とする等、実効性のある権利救済を図る。

 

<その他>

 

  1. 不必要な動物実験を禁止し、ペット動物の殺処分ゼロを実現するため動物取扱業者は届け出制を廃止して免許制とする。
    ※免許取得後も、業者への査察を行い、劣悪な環境で飼育する業者を取り締まる。
    ※ペット購入者の資格審査も厳格化する。
  2. 食料主権を確立し、持続可能な食料生産を実現するため、バイオテクノロジーの無秩序な研究や暴走する開発を禁止する。
    ※モンサント社などによる遺伝子組み換え種子の輸入は認めない。
    ※遺伝子資源へのアクセス、利用、利益の配分においては、名古屋議定書、名古屋クアラルンプール補足議定書を遵守する。
  3. 有害物質による環境リスクの低減、管理に規制的手法を含めた多様な手法によって取組み、住民、事業者、民間団体、行政が、環境リスクに関する正確な情報を共有、共働するシステムを構築する。海外からの有害物質の流入については、「有害物質の不法輸入防止に関するアジアネットワーク」(11ヵ国が加盟)を有効に活用し、ガイドラインの策定に向けて活動する。
    ※有毒重金属類には、表示義務と環境税(有害物質税)をかけて、使用を適正化させる。
    ※ダイオキシンの発生源となる物質(塩化ビニルなど)は、使用と処理を規制する。