【声明】 大阪高裁決定、広島地裁決定を受けて ‐「3.11」前よりもさらに後退する司法判断…

【声明】大阪高裁決定、広島地裁決定を受けて
       -「3.11」前よりもさらに後退する司法判断に依拠せず、政府は、
          これまで明らかにされた原発の危険性を、今度こそ真摯にとらえよ-

2017年4月2日
                             緑の党グリーンズジャパン 運営委員会

 

 3月28日、大阪高等裁判所は、昨年3月に大津地方裁判所による関西電力高浜原発の運転差止仮処分命令に対する関電の抗告を認め、大津地裁決定を取り消しました。また、同月30日には、広島地方裁判所も、四国電力伊方原発の運転差止を求めた住民の訴えを却下しました。

 これらに先立つ3月17日、原発事故避難者らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟の判決では、前橋地裁は、人の命よりも原発の稼働を優先させて地震や津波の対策を怠ったことによって東電福島原発事故が起きたことを明らかにし、東電と国の過失を認定しています。しかし政府や電力会社は、その反省もなく、形ばかりの「安全対策」で原発を再稼働させようとしています。

 福島原発事故を契機に、それまで行政の原発政策を事実上容認してきた司法の責任も強く問われています。それにもかかわらず今回の決定のように、司法がまたもや再稼働政策を追認していては、第二の福島原発事故の発生は避けられません。

 また、福島原発事故以前に出された伊方最高裁判決では、住民側が敗訴したものの、原発の安全性に関する司法判断における国などの説明責任を明確にしています(※)。ところが今回の大阪高裁決定では、「(電力事業者は)各原子力発電所が規制委員会の定めた安全性の基準に適合することを・・主張立証」すればよい、としている点は重大です。大飯原発や高浜原発の運転差し止めをめぐる司法判断で規制委員会の判断にも大きな問題があることも明白にしているにもかかわらず、今回の決定は、こうした問題を無視し、最高裁判断にも抵触し、事実上、審査基準に合っていればそれ以上の検討は要らないとしているのです。これは「3.11」以前と比べても大きく後退し、法理論としても完全に破たんしています。このような異常な判断枠組みを示さない限り、住民の訴えを否定し去ることはできないのです。

  一方、広島地裁決定は、「(四国電力の想定の合理性については)なお慎重な検討を要す」るとした上で、「(そのような検討には)地震学会における学説の状況、原子力規制委員会における審査の経緯等を慎重に認定する作業が不可欠」とし、その検討は「本案訴訟で行われるべきで、仮処分手続きにはなじまない」旨判断しています。したがって広島地裁決定は、仮処分という条件の中で出されたものであり、これが原発の安全性にお墨付きを与えるものではないということを強調しておく必要があります。

  ひとたび重大な原発事故が起これば、その被害が償いきれないものになることは、すでに明らかです。政府は、2014年5月に大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決から今年3月17日の前橋地裁判決に至る、論理性と妥当性を備えた一連の司法判断こそを、真摯に受け止め、原発推進政策を全面的に転換させなければなりません。3月31日、国と東電は前橋地裁判決を不服として控訴しましたが、これも直ちに撤回すべきです。

 私たち緑の党グリーンズジャパンは、今後も、東京電力福島第一原発事故の被害を受けた方々への支援、そして原発の速やかな廃止と再生可能エネルギーへの転換に全力を挙げていきます。

 ※註)伊方原発運転をめぐる最高裁判決では「行政庁の側において、(審査や調査の過程の)判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要がある」とし、それがなされていない場合、「行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認」されるとしている。

 

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