【報道】 南日本新聞 「政考政読」が緑の党について考察

企画[政考政読]緑の党結成の意味/「赤」に代わる新意識?

環境政策を掲げて国政進出を目指す日本版「緑の党」が設立された。

 結成宣言冒頭に「3・11後の今ここに 新たな道を歩み出す」とうたい、「原発の即時全廃」を掲げる。このため昨年の東京電力福島第1原発事故を受けて始まった動きと思われがちだが、そうではない。
 母体の、地方議員らでつくる政治団体「みどりの未来」は2008年結成。さらにさかのぼれば、02年に生まれた政治団体「みどりの会議」にまでたどり着く。約10年の前史を踏まえた設立だが、元祖であるオーストラリアの緑の党は70年代から活動し続けている。
 都内で、7月29日行われた「キックオフ!イベント」に駆け付けた人類学者で、協力関係を結ぶ運動体「グリーンアクティブ」代表の中沢新一氏が、各国で続く緑の党結成の「世界的な意味」を語っていた。
 「政府、官僚、大企業に対する批判勢力は、19世紀から20世紀にかけて赤い意識、赤い党として出現した。その赤が緑に代わっている」
 「赤」とは社会主義、共産主義を指す。中沢氏によると、これらのイデオロギーに基づく政治運動が「これでは駄目だ」と受け止められるようになる中、「緑の意識」が台頭してきたという。そう概略した上で中沢氏は次のように指摘した。
 「産業革命で第2次産業が発達、第1次産業をのみ込んでいき、労働者が大量に発生した。20世紀後半、今度は情報、金融、流通という第3次産業が異常発達し、グローバル企業が現れ、(各国の)地域社会や人々の日常生活を壊した。(原発に依存する)エネルギー政策も同じだ。労組も意味を失った。こうして緑の意識が発生した」
 経済、産業のグローバル化によって、国境を問わず、破壊されている環境や人間の営みを守るためにエコロジーや持続可能性を重視する「緑の意識」が生まれた、というのが中沢氏の解釈だ。
 確かに各国の緑の党は、環境政策だけでなく、格差解消や反性差別、平和などの理念、政策を共有、日本版「緑の党」は、国際組織「グローバル・グリーンズ」に加盟することになる。
すでに「外国の受け売り」との批判も受けている。しかし、毎週金曜日を中心に続く首相官邸前の抗議行動には、これまでにない「意識」が感じられる。
 それが中沢氏の言う「緑の意識」ならば、日本版「緑の党」は、いずれは確固たる政治勢力となっていくことになる。抗議行動の声を「音」と言ってしまった野田佳彦首相だが、「色」にも十分、注意が必要である。(共同通信編集委員 柿崎明二)